若手ビジネスマンのための「自己キャリア」

ビジネスライター吉村高廣 若手ビジネスマンのための「自己キャリア」 #07 実行力

目標を持って「やらされ感」を捨てる

私が子どもの頃、「あなたー、お風呂掃除してくれたぁ?」と奥さんから言われて、ご主人役の西田敏行さんが、「今やろうと思ったのに、言うんだものなあ?、もう!」と、悔しげに捨て台詞をはくお風呂用洗剤のテレビコマーシャルがありました。そのコマーシャルを見るたび、「ホント、そうなんだよな!」と子ども心に激しく共感したことを鮮明に覚えています。それまで、お風呂掃除を頼まれたことなど一度もなかった子どもの私が、なぜ強く共感したのか。それは、学校の宿題や部屋の掃除など、言われたことを後まわしにしがちだった私に、「あれはやったの?」「これはどうなってるの? 」と追求してくる母親を鬱陶しく思っていたからです。つまり「今やろうと思ってたのに、言うんだものなあ?」のひと言は、私の心の声であり、西田敏行さんは私の気持ちの代弁者だったのです。

あれこれ理由をつけて先延ばしにしない方がいい。それは分かっているのに、なかなか実行に移せない。こうした実行力を阻害しているものは「やらされ感」に他なりません。お風呂掃除にしろ宿題にしろ、あるいは上司から頼まれた書類づくりにしても、心のどこかで「やらされている」という思いがある限り、実行力は発揮されません。「やらされ感」を持ってしまうと気持ちの優先順位が低くなり、モチベーションが下がります。その一方、実行力がある人は「やらされている」という義務意識で行動していないため、仕事がスムーズに進んでいきます。ではなぜ、こうした意識の違いが生まれるのか。それは目標の有無に拠るところが大きいようです。自分はいま、こういう目標を持っている。そうした人は、その目標を達成する過程において発生した小さな障害は即座に取り除き前進しようと考えます。つまり、目先の業務だけを見るのではなく、大局的に仕事を捉えて判断するか否か。その違いです。

最近、実行力はビジネススキルの一貫であり、その力を獲得するためには、それ相応の訓練が必要である、とした書籍が30万部を超えるベストセラーになっています。そんなにも多くの人が「今すぐ実行できない症候群」で悩んでいるのかと思うと、少し不思議な気持ちにもなりますが、何をするにしてもスピードが求められるこの情報化社会にあっては、いま出来ることをわざわざ後まわしにするのはいかにも非効率的。確かに、実行力は必要不可欠な力と考えて良いでしょう。ただし個人的には、実行力というのは、訓練を積んで段階的に学んだり、そのためにわざわざ時間をつくるようなものではないと思っています。むしろ肝心なことは、先にも記した通り、どれだけ強い目標を持てるかで、その目標達成のためには、途中で降りかかる火の粉は、即座に払って前進できるような「意識改革」の方が大事です。


Point

「やらされ感」から「主体性」へのスイッチの切り替えは、そう簡単ではありません。勉強嫌いの子どもに、いくら「勉強しなさい」と言っても馬の耳に念仏であるように「やらされ感」を持って取り組む仕事も同じです。ただ、少し先に達成したい目標があれば、今目の前にある仕事を早く済ませて、そちらに注力したいと考えるのは普通の発想です。もし、仕事に対して明確な目標が持ちにくいのであれば、趣味でも構いません。何にしても、いま自分が、目の前の仕事を速やかに終わらせなければならない理由づけが、実行力を発揮させる原動力になるのです。

ビジネスライター 吉村高廣の視点

やるべきことを後まわしにすることの最大のリスクは、それ自体を忘れてしまうことです。とくに、一時にたくさんの小さな仕事を目の前に並べたてられると、とりあえず、ここからここまでは先に済ませて、ここから先は後にしよう、となりがちです。状況によっては仕方がありません。ただ、後まわしにしたものが多いと、何か1つ、スッポリと抜け落ちてしまうことがあります。こうした事態を回避するためにも、仕事は全てto doリストで管理して、段取りよく仕事をすることをお勧めします。

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■記事公開日:2016/10/19
▼構成=編集部 ▼文=編集部ライター・吉村高廣

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