マーケティング・ランチボックス #2

送り手思考 vs. 受け手思考

同じスマートフォンというジャンルにありながら、新機種の発売と同時に行列を生み出す海外某メーカーと、最新機能の搭載をもってしても更なる市場拡大に苦戦しているジャパン・ブランド。その違いはいったいどこにあるのか。今回は、もはや生活のマストなツールとなったスマートフォン市場を例にとりマーケティングを考えます。

タッチパネルで自由自在に操作する。たくさんのアプリケーションソフトがダウンロードできる。リンゴマークの黒船が持ち込んだこの技術は日本中のユーザーを魅了しました。 確かにそれは、多くの人たちを夢中にさせる技術でしたが、革新的に暮らしが便利になるような技術ではありません。でも、爆発的に売れ、今もその勢いに陰りは見えません。

一方、日本のメーカーもただ指をくわえているだけではなく、スマートフォンから家電製品をコントロールできたり、財布代わりになったりと、さまざまな便利を追求した技術を搭載することに成功。しかしながら、いま一つそれを凌ぐ決定力に欠ける感が否めません。

この背景となっているのは『革新的な利便性の追求=日本型』と『革新的な楽しさの追求=海外型』の違いに他なりません。つまり、日本のメーカーが、競合他社と新技術や性能の高さを競い合う一方で、リンゴマークの黒船は「これを持てば生活が変わる、楽しくなる」というコンセプトでものづくりをし、それを訴求し続け、今までと全く異なる新しい製品が誕生したというイメージを消費者に刷り込むことに成功したことにあります。

このことをマーケティングベースで考えるならば、『送り手思考』で他社との競争を意識した日本のメーカーと、『受け手思考』で消費者の頭の中との競争を意識した海外メーカーの視点の違いが、両者の明暗を分けたポイントだったと言えるでしょう。

消費者がスマートフォンに求めるものは、過剰な利便性よりも、楽しさだったり、日々の生活の中で小さな豊かさが得られるような使い勝手や機能。そんなニーズを的確に把握し、先手を打ったことが現在の売れ行きや魅力の差となっているのです。

日本の技術力は優れています。ともすれば黒船以上と言っても過言ではありません。ただそれを、どんな製品にブレイクダウンして世に送り出すか。その答えを導き出すのがマーケティングの役割なのです。
Yuki Akama
赤間裕樹
株式会社マップス
マーケティング・スタッフ
1982年東京都青梅市生まれ。早稲田大学教育学部を卒業後、 株式会社マップスに入社。
各種企業へのマーケティング・プランニング支援、中小メーカーの営業体制構築支援、不動産の新事業立案などのほか、
マーケティング勉強会・交流会を主催し、成果を「企業診断ニュース」 に掲載。
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■記事公開日:2013/06/25
▼編集部=構成 ▼清野裕司・吉村高廣=監修 ▼赤間裕樹=文 ▼写真=アマナイメージズ

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