働く男の健康ライフ2 働く男の健康ライフ2

働く男の健康ライフ2

Vol.13現代の生活習慣病 スマートフォン症候群


IT関連の調査会社がおこなったアンケートによると、通勤や通学時の電車内の過ごし方について、80%以上の人が「スマートフォンを操作している」と答えたそうです。この数字は実感値として納得できるものですが、こうした傾向に伴ったカラダの不具合が急増しています。それが「スマートフォン症候群」です。
症状としては、肩こりや首の痛み、ドライアイや眼精疲労、睡眠障害などさまざまあって、普段の仕事や学業に悪影響を及ぼしている人も少なくないそうです。そこで、「デスクワーカーの肩こり解消」でもアドバイスをいただいた理学療法士の木村佑さんに再登場いただき、その対処法を教えていただきました。
Q.

長時間使用が原因ですか?

症候群ですのでカラダが不具合を起こすファクターは一つに特定できません。長時間に及ぶ使用はもちろんのこと、スマホを操作する時の姿勢や明るさなどといった複数の素因が相まって、さまざまなカラダの部位に、いろいろな症状が現れてくる"現代の生活習慣病"と考えていいでしょう。

ファクターとして特定することはできませんが、着目すべきポイントは、背中が丸くなるとともに頸椎のカーブが損なわれるストレートネックです。本来、首の骨(頸椎)は、ボーリングの球ほどの重さがある頭部の衝撃を吸収するために緩やかなカーブを描いています。ところが、頭を前に倒す姿勢が長く続く(習慣になる)と頸椎のカーブが損なわれて一直線になってしまいます。(スマホを操作している人を見ると、多くは画面をのぞき込むように頭を前に倒しています)この姿勢がスマートフォン症候群の大きな素因と考えて良いでしょう。

正常ストレートネック
Q.

予防方法はありますか?

残念なことに予防することは極めて困難です。先に説明した通り、ストレートネックによって肩や首に生じる不具合の多くは、スマホを見る姿勢の悪さによるものです。したがって、予防するためには「姿勢を正しましょう」そして「それをキープしましょう」としか言いようがありません。それを守ることが出来れば予防効果はあるでしょうが、あまり現実的な対策とは言えません。

日常的に意識すべき姿勢調整としては、通勤電車では膝にバッグを置いてスマホの持ち手を支えたり、スマホを持つ方の腕(肘)を逆の手で支えるなどして"スマホを目の高さまで上げる"工夫が良いでしょう。姿勢が前屈みになることを回避することができます。ただ本質的な予防対策にはなりません。知らず知らずのうちに姿勢は必ず崩れてしまいます。そこで今回は「姿勢は必ず崩れるもの」を前提とした簡単なストレッチやトレーニングをご紹介します。

Q.

カラダの不具合を改善する方法は?

スマートフォン症候群を改善するためには、姿勢や生活習慣、寝具を見直すことだけではなく、日常的にストレッチやトレーニングをおこなうことも大事なポイントです。運動不足によって筋力が低下することも、ストレートネックの原因のひとつだと言われています。ストレートネックを治して首や肩の不具合から解消されたい方は、これからご紹介する首まわり、肩甲骨、骨盤のストレッチを、オフィスでもご自宅でも取り組んでみてください。

1.首まわりの調整 スマートフォン症候群で最も多いカラダの不具合が首まわりの筋肉疲労で、首を中心に肩や背中に痛みが生じます。また、首周りの筋肉に負荷をかけ続けているので、痛みだけでなく、筋肉の張りも感じることがあります。さらに気をつけたいのが、こうした痛みや張りを放置していると症状がどんどん悪化することです。症状が悪化すると、咳払いをしただけで首筋が痛む場合もあります。デスクで座ったままでもできるので、ぜひこのストレッチを習慣にしてください。

1.背筋を伸ばして正面を向き、あごを引きます。
2.あごに手を置き、頭ごと動かすようにあごを後ろへ押し込みます。
3.そのままの状態で、肩甲骨を背骨に寄せるように胸を張ります。

※この一連の流れを3回繰り返してください。
頭ごと動かすようにあごを後ろへ押し込み、そのまま肩甲骨を背骨に寄せるように胸を張る
2.肩甲骨の調整 猫背になって胸椎(胸)が丸まると、それに引っ張られて肩甲骨も前に傾いてしまいます。多くの場合、肩こりの原因はこれで、傾いた肩甲骨を元の位置に直して胸の筋肉をほぐすことで肩こりも解消されます。

1.ドアの縦枠付近に、肩と肘が平行になるように右腕を当てます。
2.右胸(大胸筋)を伸ばすように、ゆっくりとカラダを左にねじります。
3.その状態でゆっくり呼吸をしながら10秒キープします。
※この一連の流れを3回繰り返してください。
4.さらに高い位置に右腕を当てて、同じ運動を同じ回数繰り返してください。
肩と肘が平行になるように腕を当て、右胸(大胸筋)を伸ばすようにカラダを左にねじる。
3.骨盤の調整 骨盤は上半身と下半身を繋ぐ要です。そのため、骨盤の歪みにより上半身と下半身の筋肉が正しく使えなくなると至るところに不具合が起こります。骨盤の位置のズレは、椅子に座るとき浅く腰かけ、背もたれに寄りかかるような姿勢が癖になっている方に多く見受けられます。ズレた骨盤の調整には、おなかを凹ませる「ドローイン」と呼ばれる"体幹深層部トレーニング"が効果的です。デスクワークの多い方は「疲れたな」と思ったら、ぜひ試みてください。

1.椅子に座り深呼吸をしながら姿勢を整えます。
2.息を深く吐くタイミングでおなかを凹ませながら胸部を引きます。
3.息を吸い込みながら元の姿勢に戻ります。
※この一連の流れを3回繰り返してください。
息を深く吐くタイミングでおなかを凹ませながら胸部を引く。

Point理学療法士・木村佑さんからの
メッセージ

肩がこる、首筋が張ったり、痛みやしびれがある。こうした症状のほかに、利き手の親指や手の甲に痛みを訴える方がいらっしゃいます。われわれ医療従事者は「それはスマートフォン症候群ですね」などと曖昧なことは言えませんが、患者さんのお話しを伺っていると、明らかにスマートフォンに依存し過ぎている方が多くなっていると感じます。とはいえ「一日何分以内なら」とか「連続使用何分まで」といった明確な指標があるわけでもありません。カラダの声を聞きながら「このあたりでやめよう」と自己判断していただくしかありません。ただ、そのタイミングを見誤るとカラダは深刻なダメージを受けかねません。今回ご紹介したストレッチやトレーニングをしても一向に改善されない場合は、できるだけ早めに病院で診療を受けることをお勧めします。スマートフォン症候群を甘く見てはいけません。

取材協力:田中整形外科
東京都国立市中1-1-6
https://tanaka-ortho-clinic.wixsite.com/keym
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■記事公開日:2020/01/14 ■記事取材日: 2019/12/09 *記事内容は取材当日の情報です
▼構成=編集部 ▼文=吉村高廣 ▼イラストレーション=吉田たつちか

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