シリーズ清野裕司の談話室Vol.2 シリーズ清野裕司の談話室Vol.2

シリーズ清野裕司の談話室Vol.2

第12回 問題発見型の"ソリューション眼"を持つ

近年、企業の課題を解決するソリューションビジネスが拡大しています。
企業の課題といっても、人材採用やその育成、業務改革、新事業開発など多岐にわたり、
それぞれの分野に"ソリューション・パートナー"と呼ばれる事業者が存在し、
ひと声かければ、会社のあらゆる改革をアウトソーシングできる時代になっています。

私はかねてより、こうした風潮に些か疑問を感じていました。
もちろん、すべてのソリューションビジネスを否定するわけではありません。
しかしながら、目に見えやすい"課題"にとらわれ過ぎると"問題の本質"を見誤り、
結果として、改革や成長のスピードを落とすことにもなりかねません。
そこで今回は"ソリューション"の在り方について考えます。

ほとんどの"課題"は認知されている

ここ数年、ビジネスの慣用句のように使われる言葉に「課題解決」があります。広義に解釈するなら、顧客の生活課題や事業課題を解決しようとすることが、新たなビジネスチャンスに繋がる、ということになるでしょう。まさしく提案型営業などは課題解決の延長線上にあるビジネススタイルと考えられます。

確かに、自分の日常生活や、自社のビジネス環境を俯瞰すると、改善・解決しなければならない課題が数多く見当たります。たとえば、生活習慣病に配慮した生活を送れているか、eビジネス時代の業務はどうあるべきかなど、公私ともに多様なステージでさまざまな課題に遭遇します。しかし、ほとんどの場合は、課題そのもの(生活習慣病対策やeビジネスへの対応)が認知されています。ただ、やらなければならないことは分かっているけれど、対応の仕方がわからない、そのための具体的な方策を知りたい。そうした方々のガイドとなり、モノやサービスを提供するのが"ソリューションビジネス"です。

成果が出ぬうち、新たな課題が生まれる

たとえば、2005年のe-文書法の施行によって、会議資料や経理文書など、紙の状態で保存しているとかさばる書類を電子データ化して、業務効率や生産性の向上、さらには、コストの削減につなげようという企業が増えています。一見、聞こえの良い"紙文書の電子化"ですが、会社のあらゆる場所に溜め込んだ莫大な量の紙文書を電子化するためには、それ相応の時間や人手が必要ですし、仕組みづくりにかかるイニシャルコストもばかになりません。そして何より、先を見据えて手堅くやりたい総務部と、急ぎ足で終わらせたい営業部の関係が、険悪になる場合も少なくないようです。

当然ながら、紙文書の電子化にもガイドとなるソリューションビジネスが存在します。ところが、それらのガイドに従って実行した結果、会社の成長戦略に拍車がかかれば良いのですが、往々にして、さしたる成果が出ぬままに、また次なる課題が生まれてくる。そんなケースをよく耳にします。その原因は、見えやすい課題(オフィスに溢れゆく紙文書の処遇)を成長の阻害要因とはき違えて、その改善ばかりに一生懸命取り組んで"問題の本質"にアプローチできていないことが他ならぬ原因です。

企業が悩み、混迷を続ける本当の理由

ここで"そもそも論"を展開すれば、会社が抱える課題を解決するために、安易にソリューションビジネスに頼ること自体が誤りではないか、それが私の持論です。課題が分かっているということは、そもそも解決の糸口も、ぼんやりとではあるけれど見えているはずなのです。であるならば、ソリューションビジネスに頼らずとも、そのプロセスを見直せば、大抵のことは自力で解決できるはずです。誤解を恐れず言うならば、オフィスを侵食する紙文書の電子化についても、本質的には、いかに整理整頓を日常的におこなえているか。実はその程度の課題ではないかと私は考えます。

むしろ企業が悩み、新たな出口が見えぬままに混迷を続けるのは、自らにとっての課題そのものが分からなくなったときです。このような状態にある企業は、なぜ、そのような課題が生まれるのか、抜本的に解決しなければならない課題が「何なのか」が不鮮明なままに、あやふやな空気が蔓延してゆきます。そして、課題の背景にある問題(現実の現象)や、問題点(現象の起きる背景)を突き詰めぬままに、分かりやすい課題にフォーカスして突き進んでしまう。まさしくこれは、負のサイクルと言ってよいでしょう。

つまり、課題解決の前に見据えるべきは、問題と問題点の発見に他なりません。世の中で、或いは社内で、いま何が起きているのか、なぜそうなるのか。そこを考え続ければ、やるべき行動の方向がぼんやりと浮かんでくるはずです。したがって必要なのは、ソリューションビジネスのアウトソーシングではなく、自らが"ソリューション眼"を持ち、注意深く日々の仕事に臨むことではないか。そのように私は思います。

清野裕司のmarketing eye

"課題が分かっているなら、解決の糸口も見えているはずです"

Yuji Seino
清野裕司


1947年生まれ。1970年慶應義塾大学商学部卒業マーケティングを専攻 。商社、メーカーにてマーケティングを担当し、1981年(株)マップスを創設。現在、同社の代表取締役。マーケティング戦略の立案、商品・店舗の開発支援、営業体制の整備、ブランド開発、スタッフ養成の研修まで、業種業界を超えたマーケティング・プランナーとして、2500種類のプロジェクト実績。

株式会社マップス ホームページ:http://www.mapscom.co.jp

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■記事公開日:2019/10/08
▼構成=編集部 ▼文=清野裕司 ▼画像素材=PIXTA

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