シリーズ清野裕司の談話室Vol.2 シリーズ清野裕司の談話室Vol.2

シリーズ清野裕司の談話室Vol.2

第11回 スタッフが育たない組織の風土とは

マーケティングスタッフという仕事柄、
さまざまな中小企業に出向く機会を得ます。そうした中で、
「スタッフが育たない」という悩みをこぼす経営陣が少なくありません。
主体性がない。モチベーションが乏しい。こだわりが欠けている。
「頭が痛いよ、清野さん」と嘆くわけです。

「それは困ったことですね」と、仕事ぶりを拝見していると、
スタッフの成長を阻害している"要因"が次第に見えてきます。
その要因とは、"仕切り屋リーダーの存在"に他ならない。
というケースが少なくありません。
そこで今回は、スタッフが育たない組織風土について考察したいと思います。

プロジェクトの健全性を保つ能力の連鎖効果

仕事を長く続けていると、さまざまな出会いの中で自分が生かされていることを実感します。自分に出来ることは限られていることも思い知らされますし、これまでに参加したプロジェクトを顧みても、自分が果たした役割と領域は「どの程度のものだったか?」と自問することも少なくありません。

とはいえ、「籠に乗る人、担ぐ人、そのまた草鞋をつくる人」とはよく言ったもので、さまざまな人の能力を統合させてゆくことが仕事の本質であって、一人の能力がいかに優れていても、その連鎖効果を考えなければ、健全なプロジェクトは成立しません。

その一方で、仕事の機能は、個人の能力に依存することが多くあるのも事実です。ということは、プロジェクトを円滑に進めるためには、専門性を持った人の力量を見極め、その知見やノウハウをどれだけ上手く使いこなしてゆくかがカギになります。

この、キープレスというビジネスWEBマガジンを例に挙げても、多様な専門性を持つスタッフが関わっています。調査の分析は得意だが、仮説発想をすることが苦手な「分析脳」のスタッフ。逆に、資料を読み込むのは苦手だが、面白いアイディアを考え出すことが得意な「発想脳」のスタッフ。どちらのスキルも持ち合わせていないが、実行力に長けた「活動脳」のスタッフなど。さまざまな"脳力"が"WEBマガジンの編集"という目的によって、お互いの力を出し合おうと働きかけ、そこに連鎖構造が生まれます。この連鎖構造を生むべく、力を尽くすのが「編集長」と言われるプロジェクトリーダーの役割なのです。

仕切り屋はスタッフのモチベーションを阻害する

さて、問題はここからです。それぞれのスタッフの異なるスキルを尊重し、統合させてゆくことがプロジェクトの健全性を保ち成長してゆくカギになる。これは先にも述べた通りです。ところが、スタッフが育たない組織というのは、一旦は仕事を任せておきながら、結果的には、リーダーがあれこれ口を出し過ぎる傾向が顕著です。口を出すだけならまだしも、自分の理想や都合に合わせて方向性を勝手に変えてしまうこともある。つまり、リーダーが"仕切り屋"になっている組織ではスタッフの成長は困難です。

ここで再び、キープレスの編集部という"組織"を仮の例に挙げて分かりやすく説明します。編集部内外のライターに委託した全ての原稿に目を通し、サイトの特性や企画の方向性に齟齬がないかを検証することは、編集長の大事な役割です。ところがもし、上がってきた原稿が気に入らないからといって、編集長が自分好みの表現に書き直してしまったら、ライタースタッフのモチベーションは下がる一方です。一時的にモチベーションが下がるだけならまだしも、そうした仕事の風土にスタッフが慣れてしまうと、「どうせ勝手に書き直されてしまうのだから」と、仕事にこだわりを持たなくなる。こうした悪循環は、プロジェクトの円滑性を阻害し、仕事のクオリティも低下させ、当然ながら、良いスタッフも育ちません。

現在のビジネスは、個人の経験則や、過去のモデルの繰り返し演習でやり繰りできる環境にはありません。新たに創造(想像)する環境にあり、従来以上に"知恵の連鎖"や"人的ネットワーク"が求められているのです。したがって、今のリーダーに必要とされる能力とは、単に仕事を仕切る力ではなく、異なるスキルの連鎖構造を構築できる力に他なりません。こうした視点でリーダー人事をおこなうことが、組織やプロジェクトの中でスタッフの成長を促すカギとなります。

清野裕司のmarketing eye

"リーダーの役割は、異なるスキルの連鎖構造の構築"

Yuji Seino
清野裕司


1947年生まれ。1970年慶應義塾大学商学部卒業マーケティングを専攻 。商社、メーカーにてマーケティングを担当し、1981年(株)マップスを創設。現在、同社の代表取締役。マーケティング戦略の立案、商品・店舗の開発支援、営業体制の整備、ブランド開発、スタッフ養成の研修まで、業種業界を超えたマーケティング・プランナーとして、2500種類のプロジェクト実績。

株式会社マップス ホームページ:http://www.mapscom.co.jp

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■記事公開日:2019/07/22
▼構成=編集部 ▼文=清野裕司 ▼画像素材=PIXTA

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