シリーズ清野裕司の談話室Vol.2 シリーズ清野裕司の談話室Vol.2

シリーズ清野裕司の談話室Vol.2

第7回 必要なのは、仕事に対する瞬発力と対応力

前回は、高い完成度を求めて仕事に時間をかけるより、
未完成でも良いので早く仕事を終わらせて提案することの大事さ、
いわゆる「拙速の心がけ」を私なりの言葉でお伝えしました。

その後、記事を読んだ方から、こんな声を頂戴しました。
「確かにおっしゃる通りだが、若手に同じことを求めて良いのだろうか。
若いうちは、じっくり考える時間を与え、仕事の精度を上げる訓練をしなければ、
片手間仕事が常態化するのではないか」と。
もしかすると、同じように感じた方がいらっしゃるかも知れません。

そこで今回は、ご指摘に答えると共に、
少し違った角度から「拙速の大切さ」をお伝えしたいと思います。

活躍できる人と、そうでない人の差

「若手に拙速を求めて良いのか」。まず、この点についてお答えしましょう。当然ながら「Yes」です。むしろ若手こそ仕事の速度を上げて、できるだけ多くの仕事を経験して欲しいと私は思っています。よく「知恵の引き出し」ということが言われますが、その引き出しを増やすためには数多くの経験を積み、トライ&エラーを繰り返すことしかありません。他者が1つの仕事をしている間に、2つの仕事を手がければそれだけ引き出しは増えてゆきます。つまり、中堅になって活躍できる人とそうでない人の違いはそこ。圧倒的な経験値の差です。だからこそ若いうちから"拙速"な仕事ぶりを心がけることが大切なのです。

次いでお答えしたいのは、「仕事の精度を上げる訓練」についてです。前回も記した通り、仕事の精度を決めるのは第三者であり、自分本位の精度にこだわり過ぎると、時として仕事の全体像を見失ってしまいます。結果、精度を上げるどころか、独りよがりのものになって軌道修正をすることが困難になります。つまり、精度を上げる訓練とは、相手から指摘を受けて、それを修正する営みそのものなのだと私は考えています。極論すれば、若手のうちはどれだけ時間をかけてもベストな仕事はできません。したがって、無駄に時間を与えるよりも、手直しの機会を数多く与えるようにすることが若手を鍛えることになるのです。

1度や2度の失敗で、若手の評価は決まらない

しかし、仕事を任せられた当事者にしてみれば、それを実行に移すことは容易ではありません。なぜなら、失敗をして自分の評価を落としたくないからです。そしてその傾向は、真面目で意識の高い若手に多く見受けられます。たとえば、会議の議事録作成という仕事があります。これはビジネス文書の基本ですが、苦手意識を持つ若手が少なくありません。この時、生真面目な人が陥りやすいミスは、録音した発言者のコメントを一字一句再現しようとするもの。当然時間もかかりますし、時間をかけた割には会議の要点が見えない失敗作が仕上がります。つまり、じっくり時間をかけた結果×がつく具体例と言えるでしょう。

議事録の正しい書き方については別の機会に譲るとして、ここで私がメッセージしたいのは、こうした仕事のやり方をしていては(させていては)、若手の成長の機会がどんどん失われてゆくということです。失敗を恐れるな、とは言いませんが、逆もまた然り。失敗が許されるのは若いうちだけです。さらに言うなら、提出間際になって失敗が判明するより、早期に指摘を受けて軌道修正できる余裕を持っておくことが肝心です。そしてこれは、若手と管理職の双方に心得ていただきたい"ビジネスの作法"でもあるのです。

拙速を心がければ、仕事は止めどなく続く

ビジネスには「一番手の法則」があります。他者(他社)に勝ること以上に、先頭を切ることに優位性があります。したがって、最初は100%でなくてもいいので、まずはやってみること、カタチにすることが何より大事。時間をかけるのはそこからです。一旦カタチにしたものを、時間をかけてブラッシュアップして、仕事のクオリティを上げてゆけばいいのです。若手のスキルアップも然りです。求めるべきは完成度ではなく、"早くカタチにする力"に他なりません。そしてそこには、必ず失敗がつきものであることも、管理職の皆さんにはご留意いただき、瞬発力と対応力に優れた若手を鍛えて欲しいと思います。

森永製菓の創業者、森永太一郎氏は「拓地無限」という言葉を遺しました。しかしながら、「拓地」ものんびりしていると他者に先に開拓されてしまいます。「拙速」で行動を起こすからこそ、無限に深く広く掘ることができるのです。これはどのような仕事でも同じです。"先駆者"であることを心がけ、常に磨き続ければ、仕事は止めどなく続き多忙になります。つまり、忙しいから「拙速」な仕事ぶりが必要なのではなく、忙しくするために「拙速」な営みが必要とも言えるのです。それがビジネスの本質だと私は考えます。

清野裕司のmarketing eye

"完成度に勝るより、一番先にカタチにすることに優位性がある"

Yuji Seino
清野裕司


1947年生まれ。1970年慶應義塾大学商学部卒業マーケティングを専攻 。商社、メーカーにてマーケティングを担当し、1981年(株)マップスを創設。現在、同社の代表取締役。マーケティング戦略の立案、商品・店舗の開発支援、営業体制の整備、ブランド開発、スタッフ養成の研修まで、業種業界を超えたマーケティング・プランナーとして、2500種類のプロジェクト実績。

株式会社マップス ホームページ:http://www.mapscom.co.jp

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■記事公開日:2018/06/01
▼構成=編集部 ▼文=清野裕司 ▼画像素材=PIXTA

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