ビジネスBOOK #1

マーケター赤間裕樹の 必読!この一冊

『センスは知識からはじまる』 水野学著/朝日新聞出版

あなたは自分で「センスがいい」と思いますか?
それとも「イマイチ」だと思いますか?
また、それはなぜでしょう?
そもそもなぜ、「センスの良し悪し」の差ができるのでしょうか。

著者は、熊本県のキャラクター「くまモン」やNTTドコモ「iD」など、
様々なヒット企画を仕掛けたクリエイティブディレクターの水野学氏。
「センスのいい仕事をする」と称賛される同氏は、
センスとは、"生まれ持ったきらりと光る何か"ではなく、
"数値化できない事象を最適化する能力"なのだと言います。
そして、最適化するためには"知識の集積"が必要であり、
状況に応じてそれを適切に表現できることがセンスの正体であるのだと。
本書では、その裏付けをいくつかの事例を挙げて説き明かしています。

客観情報を集める努力が、センスを育む糧となる

情報を集めてそれを知識に昇華させることがセンスアップの前提となる。これが本書を貫く論旨です。ただし、やみくもに情報をストックしても「センスが高まる」わけではありません。書中ではその一例として、ファッションセンスについて紐解きながら、情報収集を行う際の"意識"について示唆しています。

【水野氏の示唆】

なんということのないセーターを着ているのに、なぜかおしゃれに見えるA君。一見彼は、何も考えずに服を選んでいるようで、実はファッションについて様々な知識を持っています。ブランドやその時々の流行はもちろん、それに加えて、自分の体型や個性、雰囲気などの"客観的な情報"もきちんと把握しており、その二つの知識を合わせて服選びをしています。

一方、いつも流行のど真ん中の服を着ているのに、どうしてもおしゃれに見えないB君。もちろんB君もA君と同様、相当量のファッション知識を持っています。しかしその知識は「今、何が流行っているのか」という1点に偏っており、A君が把握している"客観的な情報"が含まれていません。その結果、「自分はどんな服が似合うか」を考えずに選んでしまうため、流行の服を着てもセンスよく見えません。

さらに、センスのいいA君のような人は、ネットや雑誌から情報を仕入れるだけではなく、実際にお店を周ったり、人と語り合ったりすることによって膨大な量の情報に触れ、それらを取捨選択しながら、情報をカスタマイズしてゆきます。そうした営みの根底には"自分にとっての「正解」は必ずしも他人にとっての「正解」ではない"という意識があるのだと水野氏は示唆します。まさしくこれは、私たちの日常でも同様で、新しい情報に流されず物事を客観視できる人は"ビジネスセンスのある人"と言われるケースが多いのではないでしょうか。

ビジネスセンスは、あなたも必ず手にできる

つまりセンスとは、研鑽によって誰もが手にできる"能力"なのです。たとえば、ベテラン社員の「長年の勘」。これなどもひとつの「センス」と言えるでしょう。「勘」と言うと根拠が無さそうに思えますが、リアルなビジネスシーンでは、多くの経験をもとに相手の要求を素早く解釈し、最適な判断を導くベテランも少なくありません。いうなれば"知識の引き出しの多さ"です。したがって、豊富な経験から導き出される「勘」は、あながち軽視できない「ビジネスセンス」であるとも言えるのです。

「営業センス」や「プランニングセンス」など、日々のビジネスシーンでは、「センス」という言葉の壁の厚さを強く意識させられます。しかし、実のところ、その見えない壁は思い込みに過ぎません。
「いやいや、そうは言っても、結局のところ、自分のような凡人には真似できない特別な何かがあるはず...」。この本は、そう感じた人にこそ読んで頂きたいと思います。「私自身、若い頃から凡人だった」と公言する著者の想いに背を押され、自分の「ビジネスセンス」の可能性を信じてみたくなる一冊です。

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■記事公開日:2018/01/30
▼構成=編集部 ▼文=赤間裕樹

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