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大田ブランド『下町ボブスレー』プロジェクト

大田ブランド『下町ボブスレー』プロジェクト
戦略という言葉は「戦いを略する」と書きます。リーダーたるものが考える戦略とは、まさに戦いを略する方法を練ることではないでしょうか。例えば、ライバルを戦いの土俵にさえ上げない個性的なモノを作るにはどうしたらよいのか。また競合他社を引き寄せない確固たるブランドを構築するには何をすればよいのか。なかなか正解を見いだせない問いに、リーダーは創造的なイノベーションで臨んでいます。
ところが戦略を練る知者に頼るのではなく、皆でチカラを出し合い、独創的で高い加工技術を武器に、地域ブランドを発信し始めた街がありました。大田ブランド『下町ボブスレー』プロジェクト(東京都大田区)です。

工場の孤立化が深刻な問題でした

東京都大田区には、卓越した職人技とも言える専門加工や精密な部品加工のほか、高精度で複合的な金属加工を得意とする、約4000の極めて高度な技術を持つ工場があります。その多くの工場は、他の地域よりも横の繋がりはあるものの、大手企業からの直接または間接受注を行っており、守秘義務などの制限のあるBtoB製品や産業機械の部品加工が多いため、社会にアピールしにくく、工場が徐々に孤立化していくことが深刻な問題となっていました。

「従業員が9人以下の企業は約82%(大田区産業振興協会・大田区工業ガイドより平成20年)。その小さな企業で防衛関連機器の精密部品を製造しているんです。ミクロン単位の部品加工や最先端技術で頑張っています。どうにか新しいネットワークを組んで新しい力を創出できないものか」(大田区産業振興協会・松山武司)2008年のリーマンショック後の閉塞感をどうにか払拭したいと考えていたと言います。

世界に挑戦する志で区全体がまとまる

「まだ日本の技術が参入していないこと。世界のトップに挑戦できるモノは何かないだろうか。大田区の強みでもある高精度な加工が求められる部品で作られるモノは何か。行き着いたのが、オリンピック種目ボブスレーでした」(大田区産業振興協会・松山武司)
すでに大阪府東大阪市では人工衛星まいど1号の打ち上げ計画や、東京都墨田区では深海探査機の開発などが不景気の打開策として行われていました。しかし氷とは無縁の大田区でボブスレーのそりを作るという構想は、街では他人事だったようです。それが現実味を浴びてくると・・・「いっきに工場間の横の繋がりが深まりました。やがてその輪は工場周辺にまで広がり、いまでは大田区全体のモチベーションまで上げています」(大田区産業振興協会・松山武司)
世界に挑戦する志で区全体がまとまる

ボブスレーは景気の活性剤

ボブスレーは景気の活性剤
おおにしてプロジェクトがトップダウンで行われたり、予算ありきで実施した場合、時にご破算になる実績は多く見られます。大田区のように切実な現場の生の声を一つひとつ丁寧に拾い上げていくことで、著しいグローバル化に適応することは可能ではないでしょうか。
「ボブスレーが大田区の景気の活性剤となり、次ぎの世代の元気に繋げていくことが一番大事なんです」「オリンピックに出場することも大事ですが、一番は大田区の技術が世界から注目され、やがて医療分野、航空機産業、宇宙開発などで、大田ブランドが活躍している姿を見ることです」 (大田区産業振興協会・松山武司)

プロジェクト成功のポイントは「共力」

ともするとビジネスにおいてプロジェクトは「小異を気にせず大同団結を促して進める」というのが定説です。しかしながら『下町ボブスレー』プロジェクトの原点は「小異を拾い大同に就く」という、共に協力しあい結束を固めたからこそ成功できた「共力」の証です。その逆転の発想は、正解が見いだせないビジネスに光明を差してくれるかもしれません。
ボブスレーは景気の活性剤
■記事公開日:2013/07/25
▼編集部=構成 ▼吉村高廣=監修 ▼編集部ライター・渡部恒雄=文 ▼写真・資料提供=下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会

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