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本物を知る、本物を見る

アートに触れて楽しめる美術館はご存じですか。もともと視覚障害者にも美術品に触って鑑賞していただこうという試みから始めた展示でしたが、健常者にも新鮮に受け止められています。海の生き物に触れる水族館は、子供たちが生き物の持つそれぞれの息づかいを間近で体験できると好評です。図鑑や教科書をとびだして、活きているリアルな体験をすることは五感に響くのではないでしょうか。

実感訴求というマーケティング

本物に触れ見られることで、人の心は大きく動きます。実感したものは思いが深くなります。マーケティングの世界では、お試しセット、無料体験、モニター、試乗会、試飲会、試食という実感訴求が顧客に効果的です。
「実演や実感していただくことは顧客にお買い物を失敗させないというサービスだけでなく、ご購入いただいたあとこそ愛着を持って使っていただくため」とマーケター清野裕司氏は話します。「モノにはストーリーがあるのだから、このストーリーをご購入前に体験していただき、お客様にはその商品のファンになっていただく」ことも狙いだと言います。

面倒くさいという購入心理

こうした購入前に体感する、実感し納得していただくというショッピング方法に反して近年人気なのが、インターネット通販です。簡単、便利、手軽に手に入れやすいというのが理由です。大幅な流通経路の短縮などで価格的にも安いというのも魅力です。物を購入する前に体感したり実感したりすることは面倒なことの一つになっているようです。
面倒くさいという購入心理 イメージ

物=商品には物語があります

ところが"買い物にいかなくてよい"、"店員さんの説明が省ける"という軽便でスマートなショッピングで手にした物というのは、思いのほか満足感がいまひとつということがあります。なぜでしょうか。 物=商品には物語があります。作り手のこだわりや技術、作法、素材の不思議なチカラ、息づかいなど、まさしく物は語ります。その声に耳を傾けることなく、持ち味や微妙な触れたときの感覚を知らないまま購入してしまうと、おそらく満足感が薄まるからではないでしょうか。
物=商品には物語があります イメージ

キーワードは満足感と愛着

手間ひまをかけて買っていただくという発想に、ビジネス成功のヒントがあるように思えます。
簡単だ、便利だ、手間がかからない、安い、という物の売り方から少し離れて、吟味する楽しさを味わいながら本物に触れ実感し、物の息づかいを購入前に感じとっていただく。語る物に心を開き、作り手の主義主張に耳をすましてもらう時間をご用意し、さらには生産している場に足を運んでいただく機会を創出する。
こういう経験を経て手にした物は、インスタントやコンビニとは違って本物を所有する満足感や愛着が顧客の心にわいてきます。

買っていただくための機会創出の場

「作る人の手から使う人の手へお届けするそのプロセスが大事なんです」「そのプロセスが見えているショップは繁盛しています」(マーケター清野裕司氏)。
店舗は売り場ではなく、お客様が購入に至るまでのそのプロセスを大事にしている"お買い場"だと言います。顧客の体験・実感を提供し、買っていただくための機会創出の場が、結果として繁盛店、人気店となっているようです。
■記事公開日:2014/02/25
編集部=構成、清野裕司=監修・吉村高廣、編集部ライター・渡部恒雄=文、▼写真=素材辞典

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