着眼・最前線 着眼・最前線

着眼・最前線

何歳になっても学ぶことはできる。それを体現してインテリアコーディネーターに転身。

口で言うのは簡単なことだけど、なかなか実行が伴わない。
経済的なリスクと猛勉強の日々を乗り越えて、
想いをカタチにした山下リエさんの人生の着眼点を聞きました。

フリーターからコピーライターに

私、高校を卒業した直後フリーターをしていたんです。 勉強は好きではなかったので大学進学は論外でしたし、これと言ってやりたいこともなかったので就職もせずレストランでアルバイトをしていました。今でこそフリーターなんて都合のいい言葉があるので格好もつきますが、バブル期ど真ん中の当時としては相当な異端児だったと思います。
でも基本的には小心者なので「これじゃあマズイな」という思いがあって、1年間ほどでフリーターは卒業。広告代理店の制作部になんとかもぐり込みました。とはいえ広告制作に特別興味があったわけではなく、どうせ就職するのなら何かモノづくりをしたいなという思いがあったくらいでコピーライターという職業もそこで初めて知りました。まぁ、相当いい加減な動機で飛び込んだ業界でしたが、今のインテリアコーディネーターの仕事よりはるかに長く携わった仕事ですし、転職したりフリーになったりしながらも20年近くはそれでご飯も食べていたので一応は職業として成立していたのかなと。
今でもたまに広告制作の依頼がありますが、さすがにもう「なんちゃってコピーライターなんで」とお断りしています(笑)。
いい意味で自由に生きてきたと思います?山下リエ

人生の最大の転機

着眼というより開眼といった感じだと思いますが、これまでの人生の中で1つの転機を挙げるとしたら33歳の時に大学に入学したことでしょうか。入ったのは、女子大の人文学部の工芸文化学科です。その頃はフリーとして広告の仕事もそこそこ上手くはいっていたんです。ただ、長年抱えていた思いが次第に強くなって、ついに爆発したという感じです(笑)。
コピーライターとして広告制作に携わることは面白かったし、いろいろ勉強になることもありました。ただやはり「この仕事じゃないんだよな」という気持ちがずっと燻っていたのも事実です。コピーライターの仕事はロジックを積み重ねていくようなところがあります。もちろんそれが醍醐味でもあるんですが、私は直感的に物事を判断する方が好きなタイプ。つまり根本的な部分でコピーライターには向いていないと悩んだことがありました。そんな時、趣味レベルで興味を持っていたインテリアの世界が自分の中で強く顕在化し始め「インテリアコーディネーターへの道」を現実的に考えるようになったのです。
でも、動機としては弱いですよね。趣味の範囲でインテリアが好きな人は沢山います。にもかかわらず上手くいっている仕事を減らして、共働きの主婦が生活費を切り詰めてわざわざ大学まで行くなんて。常識的に考えてもリアリティがありません。ただ私にはもう1つ、どうしても埋めたい心の穴があったんです。

33歳にして着眼というより開眼した大学入学?山下リエ

苦手なことから逃げない自分に変わる

社会に出てから、ずっと何か忘れ物をしているような気持ちがぬぐえませんでした。最初の2、3年はともかくとしても、仕事を任されるようになれば自分より年上の人と1対1でビジネスを前提とした話しをしなくてはなりません。そんな時「私には何か足りない」といつも感じていたんです。それは学歴とか資格とかではなく精神的かつ本質的なものです。
私は勉強でも仕事でも、それまでは必死になって努力したことがありませんでした。「無理してやることないじゃない」というのがそれまでの私のスタンス。でも、それじゃあダメだなと。苦手なことや面倒なことにも必死になって取り組んでこそ得られるものがあるはずで、それを私は避けて過ごしてきたんじゃないかと遅まきながら30歳を過ぎて気づいたんです。だからこそ専門学校ではなく、あえてハードルの高い大学だったんです。
大学に入ってからは猛勉強しました。インテリアのことはもちろん、一般教養の基礎課程でも33歳のオバサンが先生に当てられてまごついていたら恥ずかしいじゃないですか。その頃は、学校に行って帰ってきたらコピーを書いて家事をやって課題をやってとフル回転の4年間でした。ですので楽しいキャンパスライフなんて知りません。当時お世話になっていたコピーライターの先輩が「学校で飲み会があったらオレも誘え」としつこく言っていましたが、私自身そんなものに参加する余裕はありませんでした。
大学に入ってからは猛勉強の毎日でした?山下リエ

強い想いを持って無謀な道を突き進む

大学を出てからは小さな建設会社に就職して経験を積み、今はフリーランスのインテリアコーディネーターとしてなんとか食べられるようになりました。でもまったく安心できません。厳しい業界なので来年のことを考えれば胃が痛くなる思いです。マンションのローンもたっぷり残っていますしね。でも、決断してきたことに後悔はしていません。自分が決めたことは全て良かったのだと思うようにしています。そう思えるようになったのも、無謀を承知で大学に入り、学び遂げた成果の1つだと思っています。
人ってたぶん、2つの道があってどちらを選ぶか決める時、仮に迷ったとしても五分五分ということはないんだと思います。実のところ、自分の中では6対4くらいで進むべき道は決まっているけど、決断がなかなかできなくて立ち止まってしまうのではないでしょうか。
結果、誰かに言われるままに流されて不本意な道を選んでしまう場合もある。それでいつか綻びが出てきちゃうと辛いんじゃないかなと思います。もちろんインスピレーションだけで決めることは危険です。それが自分の人生に大きくかかわる仕事ならなおさらです。でも、自分なりの調査をして強い想いを持てるなら、たとえ人から「無謀だよ」と言われても突き進めばいいんじゃないかと思います。肝心なのは、やり遂げる覚悟があるかどうかです。

自分が進むべき道は決まっていたのかもしれません?山下リエ
編集後記
「あの時こうしておけば良かった...」誰にでも1つや2つはあることではないでしょうか。その時、人はこう言います。「今からだって遅くはないよ」と。しかし、そこで実際に行動に起こす人がどれだけいるでしょうか。仕事が忙しいから。経済的に余裕がないから。山下さんのお話を聞きながら、これはもう言い訳に過ぎないのだなと強く思いました。想いがあるなら幾多の犠牲を承知で突き進む。その先に、ようやく小さな明かりが見えてくる。そのことを改めて気づかされました。(編集部ライター・吉村高廣)

取材協力:アール・プラス
インテリアコーディネーター・山下リエ
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■記事公開日:2015/03/02
▼編集部=構成 ▼編集部ライター・吉村高廣=文 ▼吉村高廣=撮影 ▼撮影協力=アール・プラス

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