着眼・最前線 着眼・最前線

着眼・最前線

基礎に根差した信念や哲学が、長く愛される、新しく確かなものを生む。 基礎に根差した信念や哲学が、長く愛される、新しく確かなものを生む。

フランス料理レストラン『マノワール・ディノ』今を生きぬくための、仕事における着眼点とは。
オーナー・マダム井上みほさんに聞く

フランス料理レストランの存在意義とは

私どものレストランは、フランスで修業を積み重ねてきたシェフ井上が、いまから30年前に京橋に店を構えたのが始まりです。こちら青山のマノワール・ディノは18年目になります。両方ともいわゆる本格的なフランス料理をお楽しみいただける店です。ここに出店しようと思ったわけは、庭にある楠木にほれ込んだこと。レストランでお料理を楽しむというのは、その店の味もさることながら、空間の演出やギャルソン、ソムリエのおもてなしを楽しむということでもあり、非日常を体験することだと思うのです。エントランスを入った瞬間からの3時間は最高の思い出づくりの時間。味、空間、もてなしのすべてが一体となってお客さまの心に刻まれます。
フランス料理レストランの存在意義とは
『非日常を体験していただくための 場の提供だと思う』---  井上みほ 『非日常を体験していただくための 場の提供だと思う』---  井上みほ

伝統的な味を守るということについて

私どもは、景気の良し悪しに左右されず、安定的にお客さまがご来店くださいます。それは長年培ってきた技術のもと、確かな味をご提供し続けており、それをお客さまがご存じだからだと自負しております。とはいえ、私どもは古いものを守るために仕事をしているのではなく、お客さまに愛される料理をご提供するために仕事をしているのです。それは、初めに「料理ありき」ではなく「お客さまありき」といった考え方です。
新しく開発した料理の方が支持されるならば、30年の歴史を持つ料理でもメニューから外します。お客さまの求めるものの中には、古い料理もあれば新しい料理もあります。その結果、お客さまが長く求め続ける料理が、伝統的な料理になっていくのです。
伝統的な味を守るということについて
『古いとか新しいとかではなく、すべてがお客さまのために』---  井上みほ 『古いとか新しいとかではなく、すべてがお客さまのために』---  井上みほ

伝統的なレシピと新しい食材について

今は昔と比べて新しい食材やフレッシュな食材が世界中から仕入れることができるので、料理の中で様々な冒険をすることが可能です。だからといって、うわべだけの創作料理のようなことはやりません。
私どもの店では古典芸能など同じように、絶対の基礎、絶対のレシピに基づいて、その上で自在なアレンジを行うわけです。とくにフランス料理の場合は多くの食材を組み合わせて味をつくる料理ですので可能性はまだまだ広がっていくはずです。
ただ、基礎を持たずに、「料理ありき」の仕事をしていては、一時のブームで終わってしまい、長く愛される料理は生まれません。これはどんな仕事でも同じだと思いますが、確かな基礎に基づいた信念や哲学がないと高度に進化し、持続的に成長することはできません。
伝統的なレシピと新しい食材について 『確かな技術と信念があれば、新しい取り組みは成功する』---  井上みほ 『確かな技術と信念があれば、新しい取り組みは成功する』---  井上みほ

サービス業として一番大切にされていることは

震災の後、1ヶ月半くらいはキャンセル続きで大変な時期が続きました。しかし私どもは、お客さまがいらっしゃらない時でも、毎日一歩でも前進しようと思っていました。店内をくまなく掃除してみたり、新しいパンフレットをつくってみたり、一つでもいいから前進しようと思っていました。そうしたことは必ず何かにつながっていくのです。
「今日はひまだから休みましょうか」ではなく、その時間の中で、この店の責任者である私が前向きになって事を起こしていかなくてはいけないし、そうした時こそ、いかにエネルギーを持ち続けることが大事かと実感しました。リーダーは窮地にあってこそ前を向き、パワーを発信し続けることが必要です。
サービス業として一番大切にされていることは 『窮地にあってこそ前を向き、パワーを発信し続けることが必要』---  井上みほ 『窮地にあってこそ前を向き、パワーを発信し続けることが必要』---  井上みほ
編集後記
確かな技術とものづくりに込める信念や哲学があれば、仕事で妥協することはない。そして、妥協なき仕事の中からしか、時代を越えて愛される新たなものは生まれない。ビジネスにおける「善のスパイラル」とは、こうした発想から育まれていくのだということを実感したお話でした。(編集部ライター・吉村高廣)

取材協力:マノワール・ディノ
東京都渋谷区渋谷4?1?13
TEL:03-3406-0200
URL:http://www.manoirdinno.com
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■記事公開日:2013/03/25
▼編集部=構成 ▼編集部ライター・吉村高廣=文 ▼田尻光久=撮影 ▼撮影地=マノワール・ディノ

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