ビジネスBOOK #3

マーケター赤間裕樹の 必読!この一冊

『感動をつくれますか?』 久石譲著/角川書店

論理的には間違っていない。でも、何か違う。ピンとこない。
そんなモヤモヤを払拭するためのヒントを示してくれるのは、
経営学者でもマーケティングの専門家でもなく、音楽一筋の作曲家です。

著者の久石譲氏は、『となりのトトロ』や『崖の上のポニョ』など、
多くの名作映画で劇中音楽を担当してきました。
手掛けた音楽は心に残る名曲ばかりで、その感性は時代を選びません。

そんな著者は、仕事で「ピンとこない」のは、
頭だけで納得して"腑に落ちていない"状態だから、と指摘します。
この本は、そんなモヤモヤを突き抜けるための心構えを説いてくれています。

5%の"直感的なひらめき"で突破する

楽曲づくりの95%は"論理的な思考"であると久石氏は言います。いかに天才的な作曲家であっても、その音楽は「ドレミ...」の音階で出来上がっており、過去の名曲が紡いできた旋律の歴史が、新たな音楽を生む上での土台となるからだそうです。

久石氏自身、映画音楽を作曲する場合は、このコンセプトならこんなリズム、この楽器でと、論理的に積み上げてゆくのが基本だそうです。ところが「どうもピンとこない」と、思考の迷路にさまよい込んでしまうことがある。それは、頭では納得できているけれど心に響かない。つまり"腑に落ちていない"からだと言います。そして、ここを突破するためには残りの5%、"直感的なひらめき"が降りてくるのを待つしかないと言います。

"直感"だけでは商業音楽は成立しない

"直感"の源になるのは、自己の体験や学んだ知識などのバックボーンです。だからこそ、"直感"の引き出しを増やす努力が必要です。音楽以外の分野の人と話しをしたり、「なんでこれが売れるんだ?」と思うようなヒット曲にも耳を傾け、人気の理由を探る努力を惜しみません。また時には「第一印象に立ち返る」など、さまざまなアプローチを試みてイマジネーションの幅を広げるそうです。

ただし、いかに"直感"が大事と言っても、それだけに頼って自分の好き・嫌いだけで作曲していては商業音楽は成立しません。それは芸術家の仕事なのだと久石氏は言います。ビジネスとして音楽と向き合う以上は、自分の"直感"が、世間やクライアントが求めるモノとズレがないかどうかを検証することも必要で、実はその尺度になるものが、95%の"論理的な思考"なのだと述べています。

3つの力を発揮して心に響く仕事をする

つまり、求められている仕事のコンセプトを深く理解した上で、音楽の基本理論や今の流行までを客観的に捉える「論理的思考力」。腑に落ちるまで悩み抜き、自らの知識や経験をもとに「これだ!」というひらめきを導き出せる「クリエイティビティ」。さらには、その両者を編集して的確なアウトプットを行う「プレゼンテーション力」。これら3つが揃ってこそ、感動を与える音楽は生まれるのです。

そんなモノづくりを体現する久石氏は、最新理論ばかりを追い求めるビジネスパーソンにも通じる警鐘を鳴らします。「理論は、過去のものを体系立ててまとめることには役立つが、創作そのものに役立たない。頭で考えただけのものはダメだ。理論で分析できても、仕事の核心にはタッチしない」新しい企画を求められているのに、ありきたりの企画に落ち着いてしまう。そんな方々にぜひ読んで頂きたい一冊です。

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■記事公開日:2018/07/09
▼構成=編集部 ▼文=赤間裕樹

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