ビジネスBOOK #2

マーケター赤間裕樹の 必読!この一冊

『世界のエリートはなぜ
"美意識"を鍛えるのか?』 山口周著/光文社

書店を見渡すと、ビジネスを成功に導くための、
様々なスキルがガイドされています。
しかし、多くの人が真似のできるやり方で、
他社と明確な差をつける絶対的な「正解」を
導き出す手法などあり得るのでしょうか。

組織開発・人材育成を専門に、
多くの企業コンサルティングを実践してきた山口周氏は、
分析や論理、理性を偏重し過ぎるビジネスパーソンに対して
「正解のコモディティ化に陥っている」と警鐘を鳴らしています。

そして、様々な問題が絡み合った複雑で不安定な現代社会においては、
美意識を重視した判断や、「ピン!」ときた直感を優先した意思決定こそが、
高い競争力を発揮すると主張しています。

成熟社会では、自己実現欲求を刺激する感性が武器になる

著者が主張する「美意識」とは、決して芸術的なセンスのことではありません。個々に内在する「真・善・美」のことであり、言い換えれば哲学や倫理、文化・歴史などを背景とした価値観であると説いています。

例えば、1979年に発売され大ヒットしたソニーの「ウォークマン」。アイデアの発端は、当時名誉会長であった井深大の「海外出張の際に、機内で音楽を聴くための小型カセットプレイヤーが欲しい」という思いから試作品を開発し、これを創業者の盛田昭夫に見せたところ大いに気に入り、製品化されたと言います。しかしながら当時は、ようやくラジカセが普及し始めた時代です。社内では、「録音機能も持たないカセットプレイヤーなど売れるわけがない」と、市場調査をもとに、極めて論理的に大反対をしたそうです。

しかし、経営トップの両者は、極めて直感的な判断を最優先してゴーサインを出し、結果として世界中の音楽シーンに大変革をもたらしたのです。そこには、設立の頃からの、面白くて愉快に感じることをどんどんやっていこう、という同社の精神が底流にあったからです。
それこそが井深大や盛田昭夫にとっての「美意識=真・善・美」であり、調査や当たり前の風潮を超えた判断の軸になったのです。

そして、全地球規模での経済成長が進展しつつある今、世界は巨大な「自己実現欲求の市場」になりつつあります。そのような時代だからこそ、論理的に機能的優位性や価格競争力を形成する能力よりも、人の承認欲求や自己実現欲求を刺激する感性や美意識が重要になる、と著者は示唆しているのです。

リーダーにこそ、美意識をもとにした判断が求められる

ここでは経営史に名を残す偉大な両名の事例を挙げましたが、「美意識」が求められる判断の場面は、決して経営トップだけとは限りません。

新商品開発の企画会議、営業現場での顧客対応、日常の何気ない会話など、様々な場面でアイデアは浮かぶものです。その一瞬、「これはいける!」「自分は天才だ!」と思う程に成功を確信する人もいるでしょう。しかし、論理的・理性的に分析した結果、「周囲の説得が難しいから」「過去に事例がないから」と諦めてしまう人、もしくは部下の画期的なひらめきに対し、石橋を叩きすぎて潰してしまうリーダーも少なくないのではないでしょうか

動的で複雑で、何が正解なのかが分かりにくくなっていく現代のビジネス環境において、今後、リーダーとしてチームを率いていくためにはどのような研鑽を積まなければならないのか。リーダーを目指す人に、そんな強い問題意識を植えつけてくれる一冊です。

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■記事公開日:2018/04/03
▼構成=編集部 ▼文=赤間裕樹

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